【この差】「俳句」と「川柳」の差

専門家:星野高士(俳人)、杉山昌善(川柳作家)

 

【この差】は…

 「基本ルール」が違う

 

【この差】のポイント!

「俳句」の基本ルールは、「風景」を詠む、「季語」を使う、「切れ字」を使う、の3つ。
「川柳」の基本ルールは、「人間」を詠むこと。

 

「俳句」のプロと川柳のプロの作品

「秋の古民家の台所」を撮影した1枚の写真をお題に詠んでもらった

「俳句」のプロが詠んだのは、「さわやかさ 蛇口ひねれば 水が出る」

川柳のプロが詠んだのは、「独り居に 蛇口の水の 音やさし」

「俳句」と「川柳」には、それぞれ違う基本ルールがある

 

「俳句」の基本ルール① 「風景」を詠む

「俳句」は、人間の心情などは詠まずに見た「風景」を詠むのがいいとされている

そのため、「俳句」のプロは、窓から見える秋の景色がとてもさわやかなこと、そして、手前にある蛇口の水がとても澄んで見えたことから、この句を詠んだ

 

「俳句」の基本ルール② 「季語」を入れる

「季語」とは季節を表す言葉で、この句では「さわやか」が秋の「季語」となっている

そのため、春や夏の俳句に「さわやか」は使ってはいけない。

 

「俳句」の基本ツール③ 「切れ字」を使う

「切れ字」とは、強調したい文をいったん区切る時に使う助詞この句の場合、「さわやかや」の「や」が「切れ字」となる

窓から見える秋の季節がさわやかなことを強調したかったため、「さわやかや」とした

もし、「さわやか」を強調しない場合は、「さわやかに」や「さわやかな」となるが、「さわやかや」と「切れ字」を使うことで、さわやかなことを強調している

「や」以外にも、与謝蕪村(よさぶそん)の「春の海 終日(ひねもす)のたり のたりかな」の「かな」や、小林一茶の「大の字に 寝て見たりけり 雲の峰」の「けり」「俳句」でよく使われる代表的な「切れ字」

 

「川柳」の基本ルール① 人間を詠む

「川柳」には「俳句」のように「季語」や「切れ字」のような決まり事はない。「川柳」の決まり事は、「人間」を詠むということ「川柳」の場合、「5・7・5」の主人公は「人間」

「川柳」のプロは、お題の写真の中に人物はいないが、ひとり寂しく過ごしていても蛇口から出る水の音に癒してもらえる、そこに暮らす人の悲哀や哀愁を写真から詠んだ

 

「俳句」のはじまり

平安時代、貴族の間では「俳句」と「川柳」のもとになった「和歌」が流行っていた「和歌」とは、「5・7・5・7・7」の31音で詠んだもので、有名な百人一首は「和歌」を百首集めたもの。持統天皇が詠んだ「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山」も「和歌」。「和歌」の基本ルールは「俳句」と同じ、①「風景」を詠む、②「季語」を入れる、③「切れ字」を使う、の3つ。

室町時代になると、複数で「5・7・5・7・7」を詠む「連歌」という遊びが誕生した。「連歌」とは、しりとりのようにリレー形式で歌をつなげる「和歌」のこと

例えば3人で「連歌」を詠む場合、1人目が「雪ながら 山本霞む 夕べかな」と「5・7・5」の句を詠み、2人目が1人目の句を受けて「行く水とほく 梅にほふさと」と「7・7」の句を詠む。

続いて3人目が、2人目の句を受けて、「川風に 一むら柳 春見えて」と「5・7・5」の句を詠むと、再び1人目が3人目の句を受けて、「船をさす音も しるきあけがた」と「7・7」の句を詠む。

このように「連歌」は、「5・7・5」と「7・7」をどんどん繋げていく遊び。「和歌」が個人戦だったのに対し、「連歌」はチームプレーで、ゲーム性と即興性が加わり、貴族の間でとても流行った

江戸時代になると、貴族の遊びであった「連歌」が庶民にも広がったが、貴族にとって庶民が詠む「連歌」は少し滑稽に思えたため、滑稽という意味を持つ「俳諧」という言葉を付けて「俳諧連歌」と呼び区別した

そして、「俳諧連歌」からさらに新しい遊びが誕生した。

それが、最初の「5・7・5」の17音の句だけを詠むという遊び

その遊びを「俳句」と名付けたのは、「柿食えば 鐘が鳴る鳴り 法隆寺」の句で有名な俳人の正岡子規で、明治時代になってからのこと

 

「川柳」のはじまり

「川柳」も「俳句」と同じく「俳諧連歌」からできたものだが、なぜ「川柳」は人間を詠むものになったのか?

「川柳」は江戸ではじまったもの。江戸は100万都市で、まわりが人間ばかりだったため、庶民が一番興味があるのは身近にいる人間だった

そのため「俳句」のように景色ではなく、人間観察から生まれたユーモアやウィットに重きをおいて庶民が楽しんだ「5・7・5」が「川柳」

例えば、江戸の庶民が詠んだ「川柳」には、「どっからか 出して女房は 帯を買い」とこっそり貯めたヘソクリで新しい帯を買った妻を詠んだり、「役人の 子はにぎにぎを よく覚え」と賄賂を受け取ることが多かった役人を皮肉ったりしたものがある。

「川柳」は細かいルールよりも、もっと自由に身近な人々のことを面白おかしく詠もうという江戸庶民ならではの感性から生まれたもの

 

なぜ「川柳」は「川」に「柳」と書く?

「川柳」という呼び名は、人の名前からとった江戸中期に柄井川柳(からいせんりゅう)が選んだ庶民の「5・7・5」の句をまとめた句集「誹風柳多留(はいふうやなぎたる)」が江戸でベストセラーになり、選者の「川柳」の名が広く知られることになる

そして現在、庶民の「5・7・5」を選者の柄井川柳の名をとって「川柳」と呼んでいる

 

【minnano編集部】
「俳句」と「川柳」の差、ご存知でしたか?

「川柳」の名前の由来が、人物の名前だったとは驚きです!?

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